事業背景

本事業を企画・提案する直接のきっかけは、東京圏における国家戦略特区の申請により、近い将来、外国人美容師の国内における就労が実現するとの認識である。ここでは、この認識も含め、本事業が企図する教育プログラム開発の必要性について、
 ① 美容師の需給バランス
 ② 外国人の美容就労意識
 ③ クールジャパン戦略との整合性
の各区分にしたがって説明する。

美容師の需給バランス

美容師免許登録者数・従事者数、美容サロン数の推移
美容師免許登録者数・従事者数、美容サロン数の推移

景気の波や人口構成の変化などの時系列的要因がある中、美容サロンの数は増えているが、廃業件数も多く、少子化により若者のなり手が順調に増えているわけではない。美容師免許の登録者数も増え続けているが、免許を取得しても、化粧品等美容サロン以外の美容業界に従事する者が多いため、従業美容師数は登録者数の半分にも満たない状況にある。

美容サロンの従業者規模別施設数の構成割合
美容サロンの従業者規模別施設数の構成割合
美容サロンの後継者の有無
美容サロンの後継者の有無

また、美容サロンは零細の経営体が多く、従業者数が5人未満の施設が全体の8割近くを占めており、その大きな経営課題として後継者不足が認識されている。美容師を数百名単位で抱える大手美容サロンがひしめく東京都であっても、サロン数はコンビニよりも多く2万を超えており、その構図は全国的なものと変わらない。本校卒業生に対する求人倍率も20倍を超えており、美容サロンにおいては慢性的な人材不足の状況にあり、このことも、国家戦略特区申請の一因となっている。

外国人の美容就労意識

日本に留学する学生の数がこの数年大きく増加している。
2008年から2018年の10年間の変化で見ると、高等教育機関全体では124千人から209千人に増え(69%増)、中でも専門学校では26千人から67千人に増え(158%増)、その伸びは突出している(数値の根拠は日本学生支援機構の各種調査結果に基づく)。
この伸びは、具体的な技術の習得を目的とした留学の意思を感じさせる。

専門学校を卒業した留学生の進路(日本語科卒を除く)
専門学校を卒業した留学生の進路(日本語科卒を除く)

また、専門学校を卒業した留学生の多くは、日本での就職、進学を実現または希望している。このように、外国人留学生は、具体的な技術を習得した上で、日本で就労する意識が高いことがうかがえ、国家戦略特区が実現すれば、外国人美容師は日本の美容サロン業界の振興に大きく貢献するものと考えられる。

どのように活躍したいか(対象は美容学校生)[国際比較]
どのように活躍したいか(対象は美容学校生)[国際比較]

本校で平成26年度に実施した調査においても、アジア諸国の美容学校に学ぶ多くの学生が、自国以外の国で仕事をしてみたいとの希望を持っていることが明らかになった。このことも、外国人美容師の国内就労促進を裏付けるものとして注目できる。

クールジャパン戦略との整合性

外国人美容師の就労を可能とする国家戦略特区に対する東京都の要望は、
2018年8月27日に開催された「国家戦略特別区域会議」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/180827goudoukuikikaigi.html
において提出された。この提案の中で、外国人美容師が就労することによって期待される効果として、次のような内容が挙げられている。

  1. 法の矛盾の解消
  2. 日本の美容の高い思想・文化・技術の海外への移転と普及による国際貢献、海外への日本文化の浸透、クールジャパン人材の受入れ、そして、海外での日本製美容商材の需要拡大に貢献できるものと考える。
  3. 外国人との共生社会が実現するとともに、増加する外国人観光客の美容サービスインバウンド需要へのより円滑な対応が可能となり、需要拡大が期待できる。

この提案の中で注目すべきは、外国人美容師の就労効果として、国内のみならずアウトバウンド(海外展開)の視点も採り入れられていることである(上記の2)。すなわち、外国人美容師を通して日本の美容技術が広く海外に伝わり、「クールジャパン」の観点からその魅力を発信する効果があることを指摘している。そのことは当然、国際競争力の向上を目指す国家成長戦略の政策にかなうものである。
本事業は、このように国家戦略としても重要な位置づけにある政策を具体的に実践するものとして、絶好のタイミングで実施することになる。